3品種が織りなす
優美なるハーモニー

ナパ・ヴァレーのロバート・モンダヴィと、モンタルチーノのヴィットリオ・フレスコバルディが初めて出会ったのは1970年代。意気投合したふたりは、「互いの文化と情熱を融合させ、モンタルチーノの地で前例のないワインを造る」とのビジョンを掲げ、95 年、テヌータ・ルーチェを創業した。初リリースのルーチェ1993は、フレスコバルディが所有するカステル・ジョコンドの畑のサンジョヴェーゼとメルロをブレンド。当時のモンタルチーノにおいて画期的だったこのワインは、瞬く間に世間の脚光を浴びた。

「創業当初から我々が目指すスタイルのキーワードは、ハーモニー、一貫性、メモリーです。畑のポテンシャルを徹底的に追求した結果、個性ある区画や品種が融合したハーモニーあるワインが誕生。このスタイルは、どのヴィンテージも一貫しています。そしてワインを飲んだ人たちが、ファインワインとして記憶に残るような酒質を追求しています」と、アジア太平洋担当輸出部長のアルベルト・オレンジアは言う。

現ワイナリーの所在地は、適度な海風も吹き注ぐモンタルチーノ南西部。広大な敷地内に点在する有機栽培畑の周囲は森に囲まれ、生物多様性が保たれている。多彩なテロワールが存在しているからこそ、ピュアで伝統的なサンジョヴェーゼと、モダンでインターナショナルなメルロやカベルネ・ソーヴィニヨンとの甘美なる共演が実現。現在は、徐々にビオディナミ栽培へと変換している最中だ。

「これまで築いてきたルーチェのスタイルを踏襲しながらさらに品質を高め、持続可能な状況を保つためにビオディナミの導入を進めています。まずは畑からよりよい状態へと導くことが大切です」。酷暑の夏が続きブドウに水分ストレスがかかりすぎる近年は、剪定のタイミングや方法を変更するなど、気候変動にもキメ細やかな対応で対処している。

2017年には新ワイナリーが完成し、18 年にお披露目された。環境へのインパクトを最小限に抑えた設計で、地下に隠れるセラーの屋根全面を植栽が覆い、一見すると昔ながらののどかな風景が広がっているかのよう。湿気の溜まる谷間に建築されたセラー内部は夏場の灼熱から守られ、エネルギー消費量の抑制にもつながっている。

収穫したブドウは、新たに導入した光学式自動選果台を使用し、より一層選果を徹底。醸造用タンクは、ワインへの影響を少なくするためにチューリップ型のセメントタンクを起用。自然酵母による発酵で複雑味を出しつつも、発酵中の自然対流がスムーズに起こることで無理のない抽出が進み、エレガントさが備わった。19 年にはワインメーカーも交代。若きワインメーカー、アレッサンドロ・マリーニが新風を吹き込んでいる。

独自のスタイルで確固たる地位を確立しながら、より一層の高みを目指すテヌータ・ルーチェ。たゆまぬ品質追求の成果は如実にワインに反映され、さらに優雅さと奥行きが増幅した印象だ。現在リリースする4種類のワインには、モンタルチーノの地で育まれた唯一無二なるアイデンティティが刻み込まれている。

■ワイン紹介

写真左）
ルチェンテ 2019
Lucente 2019

テロワールを親しみやすく表現。柔和で飲み心地よく、喜ばしい果実味があふれる。メルロ75%、サンジョヴェーゼ25%。フレンチオーク樽（新樽20%）熟成12カ月。（6,270円）

左隣）
ルーチェ 2019
Luce 2019

柔和なメルロとエレガントなサンジョヴェーゼが融合。厳格さをもちつつもシルキー。サンジョヴェーゼ50%、メルロ50%。フレンチオーク樽（新樽20%）熟成24カ月。（23,100円）

右隣）
ルーチェ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ 2017
Luce Brunello di Montalcino 2017

単一畑マドンニーノの純粋なサンジョヴェーゼを表現。初ヴィンテージ2003年。凝縮しつつ上品。スラヴォニアンオークの大樽で熟成24カ月。（23,100円）

右）
ルックス・ヴィティス 2017
Lux Vitis 2017

単一畑カンポルンゴのカベルネ・ソーヴィニヨン95%、サンジョヴェーゼ5%。フレンチオークの新樽で熟成24カ月。初ヴィンテージは2015年。力強くエネルギッシュな余韻。（30,800円）

［お問い合わせ先］
日本リカー株式会社
TEL：03-5643-9770
https://www.nlwine.com

撮影協力：アンティカ・オステリア・デル・ポンテ
https://www.anticaosteriadelponte.jp/

Text : Etsuko Tsukamoto