
スプマンテの雄、フェッラーリ 名醸造家を迎え新たなステージへ
2023年、フェッラーリ社のシェフ・ド・カーヴに就任したシリル・ブラン。シャンパーニュの名門メゾンでの偉大なキャリアをもつ名醸造家の目から見た、イタリア、トレントの卓越性とは?
「私がシェフ・ド・カーヴのオファーを受けたのは、トレントのテロワールに恋したからです」と、シリル・ブラン。
始まりは、ロンドンでフェッラーリ社CEOのマッテオ・ルネッリとともにフェッラーリのワインをテイスティングしたことからだった。シャンパーニュ地方アイ村に生まれ、シャルル・エドシックのシェフ・ド・カーヴを務めるなど25年間にわたりシャンパーニュで活躍していたシリルは、フェッラーリのスプマンテをテイスティングし、フレッシュさ、純粋さ、酸の垂直性に衝撃を受けた。
「気候変動の影響が顕著な近年のシャンパーニュは、酸が穏やかで味わいがソフトになっている。しかしフェッラーリのワインをテイスティングしたとき、2000年代初頭くらいまでのシャンパーニュにあったようなフレッシュさが存在し、感動しました。さらにマッテオに誘われトレントを訪れ、周囲に山々がそびえる畑の光景に目を見張りました」。

フェッラーリ社CEOのマッテオ・ルネッリ(右)とシリル・ブラン(左)。
その後、マッテオ・ルネッリからのオファーが届いた。改めてワイナリーを訪れ、細部まで見て回った末、新たなチャレンジの場をトレントにすることを決意した。
「いままでシャンパーニュで培ってきたことを生かして、新たなステージで最初から最後までに関わりたいと思い、家族とともに移住を決めました。イタリア語も学び、パスタもうまく茹でられるようになりました(笑)」。
シャンパーニュでは、土壌構成がブドウの風味の個性を生み出す。一方トレントでは、標高がキーポイントだ。岩がちな土壌の畑が位置するのは、標高250〜700メートル。ガルダ湖からの風も影響し、多彩なマイクロクライメーイトが存在。その結果、バラエティ豊かな風味のブドウが誕生する。フェッラーリ社では、すべての自社畑がオーガニック認証を受けている。

「山々に囲まれた高標高地トレントは、ブドウがゆっくりと成熟する唯一無二のテロワール。地球温暖化の影響が少なく、私が求める酸の高いブドウがまだ見つけられるのです」。
理想的なブドウのポテンシャルを生かすために、コカール社製プレス機3台を購入した。大きな投資だったが、これによりモストのクオリティが格段に上がった。さらに、14,000ヘクトリットルのリザーヴワインを保管できるスペースも確保した。シャンパーニュでは、ヴィンテージ格差を補うために、リザーヴワインの存在が重要視されている。しかし、気候に恵まれるトレントでは、ヴィンテージによる格差は比較的少ない。トレントにおいてのリザーヴワインの役割は、「補正ではなく、テクスチャーを与えるためのもの」、とシリルは考えている。

シェフ・ド・カーヴ就任から3年目の現在は、さまざまな中長期のプランも進行中だ。トレントでは現状、畑の95パーセントがシャルドネだが、ピノ・ノワールの可能性も探求。ブルゴーニュのクローンとともに、山の産地ジュラのクローンも栽培している。
「トレントでのピノ・ノワールのロゼ・スパークリングワインの歴史はまだ浅い。フルーティさではなく、繊細さが際立つロゼを目指しています」。
人的要素も重視し、栽培、醸造に携わるチームの育成にも積極的に取り組んでいる。「若手メンバー20名からなるチームで、皆が情熱をもって働いている。チーム全体で知識を共有することが大切です。UNICATTやFondazione Macといった大学とともに、AIを使ったワインメーキングの研究も行なっています。AIが作ったブレンドと、我々のチームが作ったブレンドを比較し、我々の強みと弱点を詳細に分析しています」。
トレントのテロワールに惚れ込んだシャンパーニュ名醸造家の新たな挑戦に、期待が膨らむ!
■ワイン5アイテム

Ferrari Perle Millesime 2019
フェッラーリ・ペルレ・ミレジム 2019
標高400m以上の畑のシャルドネから。ステンレスタンクで一次発酵。瓶熟54カ月。ドザージュ4〜5g/ℓ。リンゴ、レモン、鉱物、ビスケットの香り。柔和な果実味にイキイキとした酸とクリスピーさが緻密に融合。凛としたテンションあり、腰高な余韻。

Ferrari Perle Millesime 2006
フェッラーリ・ペルレ・ミレジム 2006
ルネッリ家のアーカイブの中から、最良年のバックヴィンテージを販売。タルト・タタン、カスタード、スパイス、なめし皮の香り。チリチリとした泡が溶けたシルキーな触感。甘香ばしさがじんわり広がりセイボリー。こなれた酸や鉱物感で清々しい余韻。

Ferrari Perle Rose Riserva 2017
フェッラーリ・ペルレ・ロゼ・レゼルヴァ 2017
ピノ・ノワール80%(ブラン・ド・ノワール、10〜12時間マセレーションを50%ずつ)、シャルドネ20%。瓶熟60カ月。バラのドライフラワー、ウメの甘露煮、オレンジピールの香り。しなやかで重層的。鉱物感が強く精緻なボディ、余韻がとても長い。

Ferrari Riserva Lunelli 2015
フェッラーリ・レゼルヴァ・ルネッリ 2015
オーストリア産ストッキンガー樽で一次発酵する唯一のキュヴェ。瓶熟72カ月。エクストラ・ブリュット。リンゴのコンポート、スモーキーな香り。細やかなムース状の泡。ブリオッシュ的な甘香ばしさの奥には大量の酸と鉱物感! 輪郭が整いつつ、エアリーな抜け感。

Giulio Ferrari Riserva del Fondatore 2010
ジュリオ・フェッラーリ・リゼルヴァ・デル・フォンダトーレ 2010
創業者の名を冠したトップキュヴェ。標高500〜600m、南西向きの単一畑マーゾ・ピアニッツァのシャルドネ。ステンレスタンク発酵。瓶熟120カ月。エクストラ・ブリュット。キメ細やかで凛とした芯が通う、エレガンスの極み! ピュアな余韻が伸びやかに広がる。
[お問い合わせ先]
日欧商事株式会社
TEL:0120-200-105
https://www.jetlc.co.jp

Text : Etsuko Tsukamoto

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