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2022.12.22
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唯一無二のスパークリングワイン
名門コントラットの復活、躍進するアルタ・ランガ

バローロのように厳格で偉大なスパークリングワイン。注目の産地アルタ・ランガを牽引するコントラットのテロワールと哲学を探る。

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新興産地アルタ・ランガでさらなる高みを目指す

1867年創業のコントラットは、メトド・クラッシコの名門だ。1919年にイタリアで初めてヴィンテージ入りのメトド・クラッシコを造ったワイナリーでもある。やや甘口が主流だった時代に、フォー・イングランドという辛口の高品質スパークリングワインをリリースし、大英帝国でも高い評価を得た。「バローロ・ボーイズ」の中心的リーダーのひとりで、単一畑のバローロやバルバレスコでも世界的名声を誇るジョルジョ・リヴェッティが2007年から醸造に携わり、11年にはコントラットを買収した。大胆な改革を断行し、品質を急速に高めている。

ジョルジョ・リヴェッティ/Giorgio Rivetti
コントラットとラ・スピネッタのオーナー、醸造責任者。
近代的バルバレスコ、バローロでも知られる、バローロ・ボーイズのリーダーのひとり。


ジョルジョは新しいDOCGアルタ・ランガに賭けるという果敢な決断をした。ピエモンテはイタリアで最初に瓶内二次発酵スパークリングワインが造られた地で、偉大な伝統を誇っていたが、地元ブドウだけではなく、オルトレポ・パヴェーゼなどのブドウを使うことが多かった。

産地との結びつきが明確なピエモンテ的スパークリングワインを造ろうという機運が高まり、02年に誕生したのがDOCアルタ・ランガである。最初はわずか78ヘクタールのとても小さな呼称であったが、バローロ、バルバレスコの優れた生産者が参入するようになり、品質と知名度が高まり、11年にはDOCGに昇格。いまでは畑も377ヘクタールに増え、21年には300万本のアルタ・ランガが生産された。急成長の背景には優れたテロワールがある。

カネッリの丘の地下32mの深さに大理石をくりぬいて造られた
カテドラル(大聖堂)セラーは世界遺産に登録。


「アルタ・ランガはシャンパーニュに対抗できるスパークリングワイン産地」と、ジョルジョは言い切る。バローロやアスティの生産地区の背後に広がる高台がその産地だ。気候が冷涼で、昔はブドウが成熟せず、ヘーゼルナッツ栽培、ヤギやヒツジの放牧、チーズ造りなどがおもな産業だったが、この20年ほどは栽培技術の進化と温暖化現象のおかげでブドウがうまく成熟するようになり、スパークリングワイン産地として力を発揮し始めた。

畑の標高は高く、昼夜の温度差が激しいので、ワインはつねに酸とアロマをしっかりと保持する。バローロ、バルバレスコ地区と同じ泥灰土の土壌は堅固なミネラルをワインに与える。玄人好みの厳格なスパークリングワインが生まれるテロワールである。

その中でもコントラットは標高の高いボッソラスコ村(700~810メートル)、ロアッツォーロ村(500~550メートル)に畑をもち、凝縮感のある酸とミネラルを有する、複雑で深みのあるスパークリングワインを造っている。すべてドザージュ(補糖)を行なわない“パドゼ”で造られ、瓶内熟成期間が非常に長い。

「バローロのようにテロワールとヴィンテージを尊重したアルタ・ランガを造ります」とジョルジョ。「私が理想とするゆっくりと開いていく厳格なスタイルだけを追求します」と意欲的だ。普通はブドウ全房をプレスして果汁を得るが、ジョルジョはブドウを除梗、破砕して、したたり落ちる果汁だけを発酵させる。「一番搾りの部分だけを使います。果汁を得るのに時間がかからないので、酸化を防げます。少し色が濃くなるが気にしません。シャンパーニュのエグリ・ウーリエからアイデアをもらいました」。

アルタ・ランガの中心となるボッソラスコ村の畑は、南西向きの傾斜に雄大に広がる。
森林に囲まれ、生物多様性が豊かだ。


ジョルジョは昔からシャンパーニュが好きで、現地に何度も足を運び、ウーリエ以外にジャック・セロス、フィリポナ、ポール・バラ、クリュッグなどを訪れていた。「偉大なワインを造るには、偉大なワインを飲み込む必要があります」。また「シャルドネやピノ・ネーロのような国際品種でワインを造る限り、本当に高いレベルを目指さなければ意味がありません」とも話す。

コントラットのアルタ・ランガはその複雑さに驚かされる。白い花、白い果実の清らかな香りを包み込むようにカカオ、アーモンド、スパイスのアロマが広がる。口中では酸がシャープで、みずみずしいが、ボディが非常に堅固で、余韻が果てしなく続く。最良のバローロを想起させる雄大さと峻厳さと際だった個性をもつ。アペリティフよりも、食事とともにゆっくりと時間をかけて楽しみたいワインだ。

「ワイン造りの90パーセントは畑にあります。私は最高のブドウを栽培して、バローロやバルバレスコを生み出してきました。それと同じアプローチ、同じ感性でアルタ・ランガに向かいます。畑のテロワールと生産者の顔がはっきりと感じられるワインだけが、人を感動させることができるのです」。これからブドウの樹齢が高くなるので、ワインはますます複雑さを増し、品質が高くなる。大きな潜在力を秘めたワイナリーで、今後が楽しみだ。

■ワイン紹介

ミッレジマート・スプマンテ・パドゼ 2017
Millesimato Spumante Pas Dosé 2017

総生産量の4割にあたる8万本が造られるコントラットのフラッグシップ。ピノ・ネーロ80%、シャルドネ20%。フレッシュで、厳格で、みずみずしく、複雑。アルタ・ランガを知るには最良の一本。(参考小売価格6,094円/税込)

ブラン・ド・ブラン アルタ・ランガ・スプマンテ 2017
Blanc de Blancs Alta Langa Spumante 2017

シャルドネ100%。青リンゴ、白い花、グリルしたアーモンドが混ざる華やかな香り。シャープで、エレガントな味わい。クリーミーでしなやかだが、同時に強靱。幅広い食事に合う。(参考小売価格7,986円/税込)

スペシャル・キュヴェ パドゼ 2013
Special Cuvée Pas Dosé 2013

生産量5000 本のトップキュヴェ。ピノ・ネーロ90%、シャルドネ10%。90カ月間、澱とともに熟成。峻厳で深遠なワインだが、泡立ちは細かく、繊細。肉料理(ウサギや鶏)と最高の相性。(参考小売価格14,265円/税込)

ルカ・チリウーティ/Luca Cigliuti
輸出部長。コントラットとラ・スピネッタの哲学を伝えワインを普及させるため、
世界中を飛び回る。実家はバルバレスコで有名なチリウーティ。



[お問い合わせ先]
モンテ物産株式会社
TEL:0120-348-566
https://www.montebussan.co.jp/

Text : Isao Miyajima