5世代の伝統をいまにつなぐグラント・バージが見せるバロッサ・シラーズ、古木の力
ワインのスタイルは、流行りではなくテロワールが決める。土地を知りぬく老舗がたゆまぬ努力の末にたどりついた、バロッサ・シラーズの姿とは。
バージ家は1855年に英国からバロッサ・ヴァレーに移住し、5世代にわたってワインを造り続けてきた老舗だ。自社畑は400ヘクタール。17カ所の畑のうち3カ所には、樹齢100年を超えるシラーズやグルナッシュの古木が残る。
ワイナリーは1988年に5世代目のグラント・バージによって創立された。ワインメーカーのクレイグ・スタンスボローは、93年に参画。最初の数年間、クレイグは品種への理解を深めるべく、なんどもフランスやイタリアなどのシラー産地へ研修に赴いた。
経験を積んだクレイグは、アイコンワインのミシャックと、古木の単一畑フィルセルのスタイルの見直しに着手。「畑があるのはバロッサでも比較的気候が穏やかで降雨量のある南部。ストレスなく育つブドウは熟したプラムではなく、フレッシュな赤色ベリーの風味をもつ。そこでこの個性を生かすべく、少しずつ抽出を抑え、フレンチオークの比率を上げ、新樽を減らし、熟成樽の容量を大きくしてきました」。
フィルセルの進化は特筆すべきで、1920年植樹の単一畑に加え、いまはミシャックにも使う樹齢130年を超えるブドウと、条件のよい斜面の樹齢50年前後のブドウもブレンドしている。「樹齢だけでなく、土壌や標高などが異なるブドウを用いることで、より複雑な味わいを目指しました」。
今年で勤続30年。ワイナリーを知り尽くす大ベテランだが、品質の向上に余念がない。伝統を経験と情熱で磨き上げるグラント・バージの進化はこれからも続く。
ワイン右)
グラント・バージ フィルセルシラーズ2019
Grant Burge Filsell Shiraz 2019
ブルーベリー、スミレ、甘いタバコの香り。緻密でフレッシュな果実味に、リコリスやシナモン、モカの風味が溶け込んだ、豊かでエレガントな味わい。新樽率30%の230ℓ~25hℓのフレンチと少量のアメリカン・オークで18カ月熟成。(7,700円)
ワイン左)
グラント・バージ ミシャック 2018
Grant Burge Meshach 2018
プラムやモカ、セージ、黒コショウの香り。濃厚な果実味に、チョコレートやシナモン、アニスのエキゾチックな風味が調和した、複雑で陰影のある味わい長い余韻。300ℓ~25hℓ のフレンチオークで18カ月熟成。新樽率25 ~30%。(22,000円)
クレイグ・スタンスボロー/Craig Stansborough
チーフワインメーカー。バロッサ出身。標高の高い区画の植樹を進めるなど、醸造のみならず栽培にも心血を注ぐ情熱家。2014年にバロッサのワインコミュニティで「ワインメーカーズ・オブ・ザ・イヤー」を受賞。
[お問い合わせ先]
株式会社都光
TEL:03-3833-3541
https://www.toko-t.co.jp
Photo : Osamu Matsuo (bottle)
Text : Megumi Nishida