
コロナ禍は学習期間メゾンの伝統を継承、新たな試みにも挑戦
ヴーヴ・クリコのセラーマスターとして、ディディエ・マリオッティが初来日。3年半の“学習”について語った。

ディディエ・マリオッティが、ヴーヴ・クリコのセラーマスターに就任したのは2019年9月のこと。すでに前任のドミニク・ドゥマルヴィルはメゾンを離れ、哲学やノウハウをどう引き継いだのかが気になるところ。しかしそんな心配は杞憂であった。ディディエはこう言う。
「幸か不幸か、メゾンに来て間もなくコロナ禍となり、プロモーションのため海外に出る必要がなくなりました。それで、ワインのテイスティングに集中でき、チームのみんなから話を聞く時間もできたんです」。
とはいえ、メゾンごとに使う語彙には違いがあり、当初は戸惑うこともあったという。
「ヴーヴ・クリコでは“ストラクチャー”と“テクスチャー”というふたつの言葉をよく使います。やがて理解したのは、ストラクチャーはワインの垂直性、テンションを指し、テクスチャーは反対に水平性、まろやかさを意味する言葉でした」。
ヴーヴ・クリコのラインナップでは、ピノ・ノワールからストラクチャーを最大限引き出すのが「ラ・グランダム」、テクスチャーを表現するのが「ヴィンテージ」だそうだ。
ところで、母方の家系がブルゴーニュのアルマン・ルソーというディディエ。ロゼ用赤ワインの醸造にはまだ工夫の余地があるそうで、新たな区画や樽熟成も試みていると言う。
ディディエ・マリオッティ/Didier Mariotti
1971年生まれ。ナンシーの国立高等農学院で食品・飲料の製造工学を専攻。モエ・エ・シャンドン、ニコラ・フィアットを経て、マムのセラーマスターに就任。2019年、ヴーヴ・クリコのセラーマスターとなる。
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Text : Tadayuki Yanagi