
次の目標は石灰質土壌のワイタキ挑戦を続けるオタゴのパイオニア
グラント・テイラーがオタゴでワインを造り始めた1993年当時、ブドウ畑はわずか20ヘクタール。それが現在、2000ヘクタールまで広がった。土地ごとの特性を生かしたワイン造りに取り組むヴァリの、次なる目標は?

小誌114号のニュージーランドワイン特集でも紹介した、セントラル・オタゴのヴァリ。1993年からこの地でワインを造り始め、パイオニアのひとりとして尊敬を集めるグラント・テイラーが、サブリージョンごとの特性を生かしたワイン
を造るべく98年に設立したワイナリーだ。
現在、グラントの右腕として、実質的に、ヴァリの醸造責任者を務めるのは、女性醸造家のジェン・パー。10年ほど前から造られているオレンジワインのザ・リアル・マッコイは、ジェンの発案だという。
「当初はロゼを造る予定でしたが、ヴァリにはロゼに適したブドウが見当たりませんでした。そこでジョージアやイタリアのオレンジを思い出し、ギブストン・ヴァレーのピノ・グリからオレンジを造ってみることにしたんです」。
ピノ・グリの果皮や梗を、30日間マセレーションして造られるこのオレンジワイン。これまで並行して造られてきたピノ・グリの白ワインを、22年ヴィンテージからディスコンにしたほどの人気ぶりという。
また、ヴァリは、石灰質土壌の存在から注目を浴びる、ノース・オタゴ・ワイタキの開拓者でもある。この地に4ヘクタールのブドウ畑を所有し、ピノ・ノワール、リースリング、シャルドネ、ピノ・グリを栽培。しばしば気候の厳しさが指摘されるワイタキだが、「セントラル・オタゴを発展させたグラントにとって、次のビッグチャレンジ」とジェン。
「セントラル・オタゴのワインが、蛇行した川の水が岩に当たるようなエネルギーなら、ワイタキのワインは、深い湖にダイビングし、湖の底に着いてから浮力で自然に浮き上がるようなエネルギー」と、文学専攻らしい独特の言葉で違いを表現した。
ワイン右)
ワイタキ・ヴィンヤード ピノ・ノワール 2020(右)
Waitaki Vineyard Pinot Noir 2020
石灰質土壌のワイタキで栽培されるピノ・ノワールを醸造。濡れた石を連想させる硬質なミネラル感。しなやかなテク
スチャーと妖艶な余韻。あらゆる面でブルゴーニュ的なエレガンス。(9,020円)
中)
ギブストン・ヴィンヤード ピノ・ノワール 2020
Gibbston Vineyard Pinot Noir 2020
ヴァリが手がけるセントラル・オタゴのサブリージョンの中で、もっとも冷涼な気候。色調は淡めのルビー。フローラル
なアロマ。シルキーなテクスチャーのデリケートなピノ・ノワール。(7,920円)
左)
ザ・リアル・マッコイ ピノ・グリ スキン・ファーメント
オレンジ ワイン 2022
“The Real McCoy” Pinot Gris Skin Fermet Orange Wine 2022
色はまさしくオレンジ。リンゴやアプリコットのアロマ。凝縮感が高く、ピュアな酸味もイキイキと。心地よい渋みが食欲を誘う。ジェンによれば、香りの強い料理と合うとのこと。(5,140円)
ジェン・パー/Jen Parr
米国オレゴン州出身。スタンフォード大学で文学を専攻後、ファイナンス・ソフトウェアの会社に勤めていたが、ロンド
ン滞在中にワインに興味をもち、2003年からNZでワイン造り。醸造は独学。15年からヴァリでワインを造っている。
[お問い合わせ先]
株式会社ラック・コーポレーション
TEL:03-3586-7501
https://www.luc-corp.co.jp
Photo : Yosuke Owashi
Text : Tadayuki Yanagi