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2024.03.30
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「日本ワインサミット」で語られた日本ワインのいまと未来〜識者と生産者が山梨に集結

2024年3月9日(土)、山梨県甲府市(常磐ホテル)で「日本ワインサミット」と題したイベントが開催された。メインプログラムとして、日本の主要ワイン産地である北海道、山形、長野、山梨、宮崎を代表する生産者と識者が登壇するシンポジウムが行なわれ、モデレーターを務めた田崎真也氏のナビゲートのもとに、日本のワイン生産の現状と展望についてのディスカッションがなされた。当日の模様をリポートする。

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「日本ワインサミット」は、山梨県の「ワイン県宣言」5周年の記念事業として、日本ワインの伝統産地である山梨から日本ワインを全国にアピールする目的で企画されたもの。ワイン県副知事である田崎真也氏(以下 田崎氏)がコーディネーターを務め、酒類総合研究所 前理事長の後藤奈美氏ほか、日本ワインを代表する北海道、山形県、長野県、山梨県、宮崎県のワイナリーより生産者を迎え、シンポジウム形式で行なわれた。

登壇者は以下の通り。
(写真右から)
山梨県果樹試験場 場長 小林 和司 氏
北海道/山﨑ワイナリー 代表取締役 山﨑 太地 氏
山形県/高畠ワイナリー 醸造部リーダー 松田 旬一 氏
酒類総合研究所 前理事長 後藤 奈美 氏
ワイン県副知事 田崎 真也 氏
長野県/ヴィラデストワイナリー 代表取締役会長 玉村 豊男 氏
山梨県/中央葡萄酒 取締役・グレイスワイン栽培醸造責任者 三澤 彩奈 氏
宮崎県/都農ワイン 代表取締役 赤尾 誠二 氏

■日本のワイン生産地域の現状と課題

シンポジウムの前半は5つの地域の生産者による栽培・醸造の現状を発表。それに対し、酒類総研にて日本のワイン産地の気候風土や品種についての研究を行なってきた酒類総合研究所の前理事長 後藤奈美氏(以下 後藤氏)がコメントする形式で進められた。

“積雪と冷涼な気候を生かした栽培と醸造”/北海道

「余市・仁木や道南、道東など道内全域で、積雪や冷涼な気候に制約を受けながらも、それを生かしたワイン造りを行なっている。自分は農家の5代目で、2002年に自社ブドウによるワイナリーを設立し、ワイナリー継承者としては2代目。

自社のある三笠地区は年間15メートルの降雪があり、積雪は2メートル前後にもなる。冬の気温はマイナス20度に及ぶがブドウ畑は雪の中で寒さから守られて越冬する。降雪量のあるところがブドウ栽培地区としてリンク。降雪のない道東ではOIV登録された交配品種で冷害に耐性のある山幸などに取り組んでいる。醸造においても、低温環境での収穫や発酵が可能。北海道や空知地区でしかできない栽培や醸造を突き詰めていきたい」(山﨑ワイナリー 山﨑太地氏:以下 山﨑氏)

“寒暖差を生かし、欧州系赤品種に注力”/山形県

「多いときで積雪10メートル超える降雪地域。ブドウ生育期の気温は10度以下から40度まで上がることも。この寒暖差が激しい。全国一の収量を誇るデラウェアの生産地で1990年代は年間400トンのデラウェアでワインを造っていたが、2010年頃より、寒暖差を生かして赤系品種を増やしてきた。70軒の契約農家にシャルドネとともにメルロの苗木の配布を始め、いまでは年間約70トンのメルロが穫れている。カベルネ・ソーヴィニヨンは色付きも含めて成熟がむずかしいので自社農園で栽培。暗渠を入れるなど降雨への対応や、小サイズのさまざまな形状のタンクでの醸造にトライするなど、さまざまな醸造についてトライしている。

自社農園のマスカット・ベーリーA(以下 MBA)はバラ房で見た目はよくないが酸がのる。近隣の朝日町ワイナリーが収量をかなり制限し、甘い香りを抑えた良質なMBAを造っていて、同様のスタイルでやっている。山梨からも購入しており、山梨産は房が大きい」(高畠ワイナリー 松田 旬一 氏:以下松田氏)

“降雨と自然災害対策をしつつ収量の安定化にトライ”/宮崎県

「海岸から4キロの海を見下ろす高台にワイナリーがあり、『今日は波がいいから作業を止めてもいいか』とサーフィンをしに行くスタッフもいる(笑)。年間4000ミリ超、4月〜10月のブドウ生育期間は2000ミリの降雨がある。降雨対策としてはすべての畑にレインカットを施し、暗渠排水を仕込んだり、堆肥による土づくりを行ない、草生栽培で排水性を維持。雨による土の流出を防ぐことも重要。火山灰土壌は水よりも軽いため水はけがよく、降雨のあとも農作業が可能。

海が至近なため九州にしては涼しく、夏でも最高気温は30度以下で猛暑日になることはなく、4月〜10月の日照量が累計1300時間と豊富。白品種の畑は東西を畝にして影をつくって過度な日射を防ぎ、赤品種は終日日照を得られるように南北に畝を作る。タイプとしてはフルーティ&華やかなワインができる。

約50トンあった契約農家のMBAの果汁がこの4、5年で10トンにまで減っている。夜温の上昇や台風、シャインマスカットへ植え替えなどがその理由で代わりにビジュ・ノワールを増やしている。主要品種のひとつであるキャンベル・アーリーでは(名物料理の)チキン南蛮に合うロゼを造っている」(都農ワイン 代表取締役 赤尾誠二氏:以下 赤尾氏)

就農者希望者があとを絶たない新興地域/長野県

「長野は養蚕で栄え、畑の大半はもともと桑畑。昭和40年ごろに養蚕業が終わり、そこに新たな農業として食用ブドウを植え始め、東御は巨峰の産地となった。東御に移住し2004年にワイナリーを開業、近隣のマンズワイナリーから欧州系品種の苗木をもらい標高800メートルの畑に植樹。当時寒すぎてワイン用ブドウは無理とされたが、温暖化により高地の畑でも成熟するようになり、五一ワインの試験栽培によりメルロの適地として知られるようになったり、マンズワインがヴィニフェラで成功。千曲川ワインバレーという産地として形成してきた。

この土地での就農希望者のほとんどが医師やIT産業、金融関係といった職をもっていた県外者で、ライフスタイルとしてワイン造りを選び移住してきた人々。ワイン産地としては非常に特殊なプロフィールであるといえる。そうした人のサポートをすべく、民間としてのワイン教育機関を設立し、10期目を迎える。ワイン造りは体力面や経済面で決して簡単ではないが、ライフワークとして取り組み、充実感を得ているようだ」(ヴィラデストワイナリー 玉村豊男氏:以下 玉村氏)

“産地の「宝」を探してワインを造る”/山梨県

「まず、登壇者、視聴者の方々が山梨に来てくれたことにお礼を述べたい。山梨は4つのプレートが重なる複雑な土壌。山地面積が80パーセントを占め、丘陵地を生かしたブドウ栽培が行なわれている。標高の高さがひとつの特徴。山梨では甲州を非常に大切に思っており、ブドウ品種として好き嫌いということでなく、産地としてあって当然のもので、家族の一員のような存在。

1923年に甲州を造ったのがワイナリーの始まりで昨年100周年を迎えた。ワイン造りにおいて一代でできることは限りがあると。祖父や父は山梨ワインの普及やステイタス獲得を目指してやってきたが、自分が引き継いだいま、そのために圧倒的に優れたワイン、世界で勝負できるような卓越したワインが必要だと痛感している。それが造れたら山梨の財産になる。

自社農園では2016年から有機栽培を始め、昨年一部の区画で有機JAS認証を取得。このことで、産地を守ろうという思いが一層強くなった。もろみの製造免許を取って甲州のピエ・ド・キューブ(酒母)を作って畑の微生物で発酵させたり、土着の乳酸菌を使って発酵させたりするなどして、甲州のポテンシャルを追求している。産地の唯一無二の宝を探し、ワインを造ることが大事だと考える」(中央葡萄酒 三澤彩奈氏:以下 三澤氏)

■栽培品種やワイナリー運営についての意見交換

各地域からの発表後、後藤氏、田崎氏からのコメントによりディスカッションが展開される。

・温暖化の影響

「温暖化は地域によってさまざまな影響が出ている。北海道はプラスの影響が大きいように思う」(後藤氏)

「2019年のピノ・ノワールはアルコール度数11.5度で製品化したが、21年産は14度。熟度が上がったことは温暖化の好影響だが、北海道にはこれまでなかった病害や害虫が発生したり、醸造面ではプレス後すぐに野生酵母による発酵が始まるなど、これまでとは違う状況への対応が迫られている」(山﨑氏)

「長野も気候変動の影響でワイン用ブドウの適地となった一方で30年前は見かけなかった蚊やゴキブリが出るようになり、畑にもそれに準ずる害虫がいる。また雨量が増えているのも懸念される」(玉村氏)

・ピノ・ノワールの可能性

「ピノ・ノワールにトライする生産者は多いが、水分ストレスの反応を敏感に受けるため、積算温度とともに適地を選び、科学的な根拠や技術も必要」(後藤氏)

「何度もトライする中で地域にあった栽培方法や醸造方法を見つけた人が成功していると思う。温暖化でpH値や糖度のバランスなどが乱れてきているので、何を基準に収穫するか重要」(山﨑氏)

「水が抜ける石ばかりの畑で植えているが、雨が多い年は実が弾け出されるくらい厳しく、山形で単一で仕込むのはむずかしい」(松田氏)

「30年前、最初に植えたブドウのひとつだが、ワインの色が出にくいし病気も多いので積極的にはやっていない。全国ではいろんなタイプの香りや味わいのものが造られるようになり、それぞれがピノ・ノワールの特徴として理解されれば可能性はあるのかもしれない」(玉村氏)

・デラウェアの取り組み

「鑑定で50パーセントヴィニフェラ系であることが明らかになった。収穫量第3位の大阪でも注力しているところがある。スパークリングや甘口などスタイルがいろいろあるがデラウェアでも山形らしさが出せるのではないか」(田崎氏)

「自社では甘口のみだが人気は高い。デラウェアは手間をかけずとも糖度20度を超え、収量も1反あたり2トンと効率がいい。きちんと取り組むとポテンシャルはあるかもしれない」(松田氏)

・ワイナリーの経営面での視点

「日本のワイナリー数が500軒を超えたが、50パーセントは赤字経営という現実がある」(田崎氏)

「ヴィラデストも赤字なのだが(笑)、開業の条件に加えて人件費や土地代が高いためどうしてもコスト高となり、1本あたりの販売価格が2,000円以下だとまず成り立たない。千曲川ワインアカデミーでは、3,500円で売れるワインを造ることを目標とし、ワイン造りの歴史や地理的環境を踏まえてなぜそれを造ったか、いかに努力したかを説明できるようトレーニングする。30分それをプレゼンできれば買ってくれる人が必ずいる」(玉村氏)

「ぎりぎりの黒字経営(笑)。1回の台風で収量が3割減となる状況下、生産本数で左右されない基盤として昨年ベーカリー事業を始めた」(赤尾氏)

「やはり利益を確保しないと立ち行かない可能性もある。造りを説明して3,500円で購入してもらい、それをもう一度買ってくれるかどうかがポイント」(後藤氏)

・山梨県が果たしてきた役割

「多くのワイナリーと県の研究機関、山梨大学とその研究センターがあり、多くの人材が集まっている。造り手と研究機関の連携や協業も活発で、社会人の生産者を対象にした大学の講座もあり、それにならって北大でもワインアカデミーの取組みをスタートした。日本ワインコンクールも県の予算で行なっており、日本のワイン生産における山梨県の貢献度は高い。産地形成にとって重要な役割を果たしている。」(後藤氏)

「1980年代、90年代は造り手の多くがシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンに目が向いていたが、2000年代に入りあらためて甲州を見直し、甲州でオリジナリティを出そうとしているのはすばらしい」(田崎氏)

「山梨の偉大な先人や先輩方の尽力のおかげで我々がいまワインを生産できている」(山﨑氏)

「日本ワインコンクールには初回からエントリーし、公開テイスティングも毎年参加して勉強させてもらった。山梨県には感謝している」(松田氏)

■日本ワインの未来

シンポジウム後半は、醸造家が考えるこれからの日本ワインの展望について、前半同様に5人の生産者が意見を述べた。生産現場や日本のワイン市場などさまざまな視点からの発言があった。

“日本ワインの未来は地域の未来”/北海道

「生産者たちはいいワインを造りたいと努力しているが、いいワインを造るのが目的でなくそれを使って何をするのか、自分も含めて考える時期に来ている。地域の課題を考え、未来を描いたときにワインにできることがあるのではないだろうか。

たとえば、自分のいる三笠市は人口減少の著しい旧炭鉱町だが、ワインで町興こしや地域政策ができるのではないか。我々は、ボトルの中に空知という土地を詰めるつもりで造っている。空知の風土がワインになって運ばれ、空知の発展につながるのではないか。山梨という日本ワインの中心地でワインで皆さんの力を借りながら、ワインを軸にした空知の発展を描きたい。日本ワインの未来は地域の未来だと考えている。」(山﨑氏)

“原価の高騰に対応する商品構成が必要”/山形県

「多くの方に親しんでもらえるように小売価格1,000円台設定のワインを多く造っているが、資材の高騰が著しく、スパークリングの嘉シリーズはもう同じ価格では厳しい。4年熟成の瓶内二次発酵を2000本造っていたが、1年熟成で1万本以上を造らないと利益が出ない状況。

現在の価格を考えて、3,500円で売れるワインを造ったとしてそのブドウや造りを売り場の担当者が説明できなければならない。これは現在も必要性を感じていて、直営ショップのスタッフや売店の店員に栽培や醸造を教えたり、ゲスト向けの試飲会をショップで行なったりしている。3,000円を超える製品を買ってもらうのはまだむずかしいが、消費者にその価値を認めてもらって、買ってもらえるようにしていきたい。」(松田氏)

“宮﨑に適した品種選定とともに九州全域での取り組みも/宮崎県

「都農ワイナリーは、いまでは会社組織だがもともと都農町による第三セクターワイナリーとして創業し、いまでも農家支援という地域貢献のミッションを担っている。そのためにも質の高いワインを造らなければならないが、品種特性を出しながら土地の個性を表現することにつながるという点で樹齢にまさる品質向上はないと考えている。畑を大切にしつつ、品種選定も非常に重要。

温暖化で気候が不安定な中、台風や異常気象でブドウの原価は簡単に2倍に跳ね上がってしまう。自分たちの目指す酒質やワインを造るためにも、気候に左右されず、病害にも強い品種やクローンをチョイスしていく必要がある。

九州には大分や熊本など活発な生産地域があり、県単位でなく九州全域でGI認定に向けて働きかけることも生産者同士で話し合っている。一方で県内の取り組みとしては、都農町と宮﨑大学との地域講座を実施したり町の資源と地域経済を研究している学生と交流したりしている。二十歳になったら都農のワインを飲むという仕組みづくり、若者から祖父母まで3世代で飲めるワインを造るワイナリーにしたい。山梨のように、家族みんなが湯呑みでワインを飲んでいる、そんな文化をつくっていきたい。」(赤尾氏)

ワインの在り方そのものを見直すタイミング/長野県

「ワインは土地の価値を表現するもの。どんな土地にも価値があり、ワインを通してそれを掘り出していくことができる。さらに、ワイン造りは幾年も重ねて繋がっていくものでもある。いま私がやっている畑はたまたま預かっているだけで、誰かへ、どこかへ引き継がれながら延々と営みを続ける。ワインを造るということは土地とともに生きることであり、それがまた、ワインがもたらすすばらしさでもある。

日本ワインは一般的にはまだ認知度が高いとはいえず、日本においてワインの需要をいかに増やすかが問題。なるべく機会をつくって飲んで理解してもらうことが肝要となり、そのためにはワインツーリズムも必要。

いま、世界中でワインを造るようになり、品種や品質、楽しみ方、そして評価も変貌を遂げようしている。フランスがつくったルールに必ずしも従う必要はないかもしれないし、フランス自体も変わろうとしている。そうした意味で、ワインに携わっている人が従来の秩序や常識にとらわれると、地域の発展を阻害する懸念がある。新規参入者のワインもそれなりの質のものができており、ヴィンテージも含め、それらを個性として認識してもよい時期かもしれない。(玉村氏)

“「風土」と「熟成」をテーマに産地の確立を目指したい”/山梨県

「自分自身は『いい醸造家になりたい』と強く願っている。長く海外で勉強して体躯のいい外国人男性とともに研修を重ね、日本の醸造家として自分にできることは何か、ワイナリーでプレゼンスを出していくにはどうしたらいいかをつねに考えていた。日本人醸造家は内なる世界を求め、研鑽を重ねて足りないものを追求する。日本人としてそんな美しい心も大事にしたい。
 
甲州を大切に育て、デキャンター・ワールド・ワイン・アワードなど世界のコンペティションでも評価されてきたが、辛い経験もたくさんしてきた。世界の白品種と比較されたり、ときにシャブリと比較されることは残酷にさえ思えた。だからこそ、宝を見つけていくことが大事。そんな発見ができてそれを花開かせることができる醸造家になりたいと強く願っている。

有機認証を取得した畑で酒母を作るといったことをやっているが、オーガニックの波にのりたいわけではないし、自然発酵やナチュラルな造りにこだわっているわけでもない。ただ、秋には0度を下回ることもある標高700メートルの畑で酵母が発酵する神秘や、醸造所でタンクの中から炭酸ガスが発するさま、畑で樹が変異を遂げる様子は見るたびに感動を覚える。

これからのワイン造りにおいてテーマを挙げるなら、『風土』と『熟成』。風土が見えるワイン、そして熟成ができるワインを造ることができたら、産地として一層確立すると信じている。山梨では先人の知恵と功績、そしていまも多くの方の支えでワイン造りができる。そのことに感謝してワイン造りを続けていきたい。」(三澤氏)

続いて、メルロとピノ・ノワールを交配した赤ワイン用ブドウ品種「ソワノワール」のグラスが配られ、登壇者、会場の参加者がともに試飲。山梨県果樹試験場の小林和司場長による説明が行なわれた。

着色に優れ、成熟期が早い品種を目指して山梨県果樹試験場が30年の研究期間を経て開発し、2022年に発表された新品種。メルロの2倍以上のアントシアニンを含み、早生品種であるビジュノワールよりもさらに早期の収穫が可能。濃い色調をもち、タンニンがこなれて絹のようになめらかな味わいのワインができることから「黒い絹」という意味の「ソワノワール(Soie Noire)」と名付けられたという。登壇者からは「フェノールも豊かで味わい深い」(松田氏)、「早生で色付きがよいなら扱いやすい」(赤尾氏)といったポジティブな感想があった。

初めての試みとなった、山梨県主催の日本ワインサミット。長崎幸太郎ワイン県知事は「山梨だけでなくジャパンワインとして日本のワインを盛り上げ、そこへ貢献するべく企画した。甲府に全国から多くの方々が集まってもらい、熱意や熱気を感じた」と手応えを語った。

また日本ワインを四川料理やベトナム料理と合わせて紹介、インド大使館では試飲会を実施するなど、輸出に向けた取り組みを進めている。「本日のイベントを通して、日本の各地域が特色を出しなからジャパンワインとして産地形成を行なっていることをワイン関係者が共有できたことは大きい。多様性のあるジャパンワインのムーブメントをより多くの人が認識し、国内外にPRしていけるといい。そのセンターに山梨県がいられるように一層尽力していく」と力強く語った。

Text:Hiromi Tani
写真提供:山梨県