• Top
  • Feature
  • 冷涼産地の個性と進化ニューヨークワイン旋風が巻き起…
2025.06.06
feature

冷涼産地の個性と進化
ニューヨークワイン旋風が巻き起こる!

4月に開催されたプロワイン東京で話題となっていたのが、ニューヨーク州のワイン。来日した4生産者がブースに立ち、東海岸生まれのワインのユニークネスをアピール。訪れたゲストはその洗練された味わいと品質に驚き、鮮烈な印象を残した。

  • facebook
  • twitter
  • line


東京で存在感を放った
ニューヨークワインの真価

アメリカ第3位のワイン生産量を誇るニューヨーク州。マンハッタンにイメージされる認知度も手伝い、北緯41度から43度にかけて広がる冷涼産地として脚光を浴びている。

19世紀初頭には北米東海岸の固有品種と欧州系品種が交配され、20世紀に入ると質の高い交配品種が導入された。その後コンスタンティン・フランク博士によるヴィニフェラの取り組みが成功して以降、ニューヨークはクオリティワインの産地へと舵を切る。1976年のファームワイナリー法制定後は小規模生産者が躍進し、現在は11のAVAの中に500を超えるワイナリーがある。

ニューヨークワインがいま注目を集める理由のひとつは、特異な地理的環境と気候条件にある。冬は極寒だがブドウ生育期は少雨で穏やかな気候が続き、長いハングタイムが健全な成熟を可能にする。気候変動で酸落ちと過熟にあえぐ産地が多い中、当地ではキレイな酸が保たれ、アルコール度数が抑制されたエレガントなワインに仕上がるのである。

またニューヨーク州は大西洋や五大湖をはじめ多くの湖や川を有し、こうした水域のそばにブドウ畑が広がっている点も特徴。一定の温度を保つ水の効果で夏は涼しく、冬の凍害も免れるため、冷涼ながらもブドウ栽培の適地なのである。

こうした環境下でヴィニフェラ、ラブルスカ、そしてハイブリッド品種から個性あふれるワインが造られている。加えて、氷河の堆積土は砂質粘土や頁岩など変化に富んだ土壌を呈し、味わいの多様性に起因する。

代表産地は、中西部のフィンガー・レイクスと大西洋に突き出た半島であるロング・アイランド。フィンガー・レイクスは全米でも有数のワイン産地として知られ、氷河が形成した細長い湖岸にワイナリーが点在。湖水が気温を緩和し、春秋には霜害を防ぐ役割も果たすレイクエフェクトにより、リースリングやカベルネ・フランといった冷涼地向きの品種が高い品質で育つ。

マンハッタン住民の避暑地でもあるロング・アイランドでは温暖な海洋性気候を生かし、ボルドースタイルの赤ワインや華やかなロゼが造られる。生産者のバックグラウンドによって、イタリア系品種やスペイン原産のアルバリーニョにトライしたり、スパークリングに特化したワイナリーも。開拓者精神にあふれ、挑戦を恐れないニューヨークの造り手が、ワインシーンに新風を吹き込んでいる。

2大産地であるフィンガー・レイクスとロング・アイランドから47アイテムがズラリ。
リースリングとカベルネ・フランは生産者ごとに比較試飲ができ、
代表的なスパークリングやロゼ、シャルドネやピノ・ノワール、さらに現地でも希少な甘口など
多様なスタイルのワインが並んだ。



■来日4ワイナリー

<ワイナリー1>
Apollo’s Praise
アポロズ・プレイズ

Kelby Russell
ケルビー・ラッセル

前職のワインメーカーとして熟知する銘醸畑ラホマ・ヴィンヤードを取得し、2023年に独立。リースリングを得意とし、ストラクチャーとテンションを重視。アーティスト気質の彼は“ジョン・コルトレーンやレディオ・ヘッドの音楽のように、ノイジーなのに美しいワイン”を目指すという。

<ワイナリー2>
McCall Wines
マッコール・ワインズ

Miguel Martin
ミゲル・マーティン

ロング・アイランド・ノースフォークで2007年創業。カベルネ・フランやメルロ、アルバリーニョなどを植え、味わいに品種の個性が生きる。奥行きのあるピノ・ノワールは逸品で自社蔵にて熟成させてからリリース。「毎年最高のワインを造る。ゆえに最高のブドウ栽培に時間を費やしている」。

<ワイナリー3>
Living Roots Wines & Co.
リビング・ルーツ・ワイン

Colleen Hardy
コリーン・ハーディ

NYと豪州出身のコリーン&セブ夫妻がフィンガー・レイクスとアデレードの2拠点でワインをリリース。酸のある洗練されたリースリングやカベルネ・フラン(CF)のほか、低アルコールのスパークリングやCFのポマースをリースリング果汁で発酵させた新商品など、チャレンジを続ける。

<ワイナリー4>
Ria’s Wines
リアズ・ワインズ

Michael Penn
マイケル・ペン(写真左)

Ria D’Aversa
リア・ダヴェルサ(写真右)

UCデイビス校を出てアルザスやトスカーナ、NZで経験を積んだ夫妻が2022年、セネカ湖東岸に根を下ろす。引き継いだ樹齢40年の畑を有機に移行しつつ、クリーンで堅固なリースリングやカベルネ・フランを手がける。「NYワインの担い手として実績を積んでいきたい」。

白とグリーンを基調にリユース素材を用いたナチュラルなムードのブース。
温かみのあるペンダントライトの下でフレンドリーな生産者たちがワインをサーブ。
会期中はニューヨークの概要を紹介するセミナーも開催された。



[お問い合わせ先]
ニューヨークワイン&グレープ財団日本オフィス(旭エージェンシー内)
https://newyorkwines.jp
https://newyorkwines.jp/contact/

Photo : Bungo Kimura
Text : Hiromi Tani