
100年の眠りから目覚めた昭和元年のルイナール
古酒を口にするのはつねにエキサイティング。それは「時」を飲む行為だからである。偶然発見された1926年のルイナールに、テイスターたちはどのようなエモーションをかきたてられたのか?
エレガンスは変わらず
百年前のルイナール
それは3年前の出来事である。リヨンの名店「ポール・ボキューズ」のワインセラーから、1926年ヴィンテージのルイナールが18本見つかった。26年は料理界の巨匠、故ポール・ボキューズの生まれ年。シェフへのお祝いにと過去にメゾンから贈られたボトルという。
そして今年は2026年。ちょうど100年が経過したのを記念し、ランスのメゾンに限られた専門家を招き、1926年のテイスティングが開催された。これに合わせて6で終わるほかのヴィンテージ、16、06、96、86、76、66、56の各ミレジメもメゾンのセラーから特別に供出。46年はメゾンに2本残っていたが、液面が低く状態が懸念されたため省かれ、36年はそもそもミレジメが造られなかった。

今回の主役である1926年のほか、6で終わるヴィンテージが並ぶ。
96年は王冠とコルク、2種類のクロージャーによるティラージュの実験がなされた年で、
それがドン・ルイナール2010のコルク詰めにつながった。
これらのブリュット・ミレジメは日本未発売のアイテムだ。昨年、最高醸造責任者に就任したカロリーヌ・フィオによれば、品種構成は原則としてピノ・ノワールとシャルドネがほぼ50パーセントずつ。ただし、16年のみムニエを20パーセント含み、ピノ・ノワールは32パーセントにとどまるという。

カロリーヌ・フィオ/Caroline Fiot
2016年にルイナール入社。 20年にシャンドン・アルゼンチンに出向し、
帰国後はモエ・エ・シャンドンのモンテギュ醸造センターに責任者として勤務。
26年1月、ルイナールの最高醸造責任者に就任した。
06年は12年に澱抜きし、ドザージュ7グラムのものと、24年に澱抜きし、ドザージュ5グラムのものを比較。酸化スタイルと還元スタイルの勝負で、これは好みによるだろう。個人的には後者に軍配を上げる。
96年は王冠詰めとコルク詰めをそれぞれア・ラ・ヴォレで澱抜きし、ドザージュなしの2本に加え、04年に澱抜きし、ドザージュ10グラムのマグナムも比較した。長期熟成を施した場合はアロマの多層性でコルク詰めにアドバンテージを感じた。
さて、26年はいかに? 色調は琥珀がかったゴールドで気泡は目視できない。砂糖漬けのアプリコットやレモン、ドライフルーツやジンジャーブレッドなど多様なフレーバーが入り混じる。口に含むとわずかにペティアンで、ふくよかな甘みとイキイキとした酸味が調和をとる。ボトルには「カルト・アングレーズ(英国ラベル)」とあり、英国向けの低ドザージュものとの説明だったが、分析ではエクストラドライにあたる17グラムの残糖が確認されたという。残念なことに文献が残っておらず、品種構成は不明である。

1926年当時のシャンパーニュ地方は、フィロキセラ禍と第一次世界大戦の影響により
40%のブドウ畑を失った状態。寒い春の後、乾燥した夏が続き、収穫は10月に行なわれた。
日本は大正天皇が崩御し、元号が昭和に変わった年である。
「エレガントでフィネスに富むルイナールのスタイルが、百年前から少しも変わっていないことがわかりました」とカロリーヌ。メゾンの哲学を再確認する好機となった。

テイスティングが行なわれたのは、2年前に完成したランスのビジターセンター。
日本人建築家、藤本壮介による設計で、天然の石や木などおもに地元の建材を用いて作られている。

テイスティングの翌朝はテシー村のブドウ畑を見学。
鳥の巣を模したニルス・ウドのインスターレーションと同列に、
生物多様性のための植物が植えられ、巣箱が設置されている。
ルイナール ブラン・ド・ブラン N.V.
Ruinart Blanc de Blancs N.V.

今回はピノ・ノワールとシャルドネがアッサンブラージュされたミレジメがテーマだったが、ルイナールといえばシャルドネ100%のブラン・ド・ブラン。コート・デ・ブランだけでなく、モンターニュ・ド・ランスやセザンヌのブドウも用いられ、エレガントかつ包容力のある風味が特徴。サステイナブルに配慮したセカンドスキンをまとう。
[お問い合せ先]
MHDモエ ヘネシー ディアジオ株式会社
https://www.mhdkk.com/brands/ruinart
Text : Tadayuki Yanagi

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