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2025.06.18
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大阪・関西万博 オーストラリアパビリオンにて開催!
「イザベル・レジュロンMWとオーストラリアの自然派ワイン」

オーストラリア大使館商務部は、大阪・関西万博の期間中、4回にわたりワインセミナーを開催する。5月に行なわれた第1回セミナーは、世界最大のナチュラルワインの見本市「RAW WINE」の創業者、イザベル・レジュロン マスターオブワイン(MW)が講師として登壇。終了後、ナチュラルワインの魅力や、参加者の反応について話をうかがった。

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ナチュラルワインの世界的権威イザベル・レジュロンMWは、「自然な方法でワインを造ることこそが、ボトルの中でテロワール(風土)を正確に表現するもっとも重要な手段である」と話す。

ナチュラルワインは、畑からグラスに注がれるまでの一連の“生命”を重んじており、その土地ならではの個性を最大限引き出すことで、ワインを唯一無二の存在にしている。オーストラリアの優れたナチュラルワインが多様で興味深いのは、それぞれのワインが生まれた環境や背景の固有性を見事に表現しているからだ。

ナチュラルワインとはまさに「ワイン造りの原点」といえる。もともとワインは、すべて自然な方法で造られていた。しかし、近代以降、集約農業や技術的な醸造法の発展により、そのあり方は変化した。オーストラリアでは1788年のブドウ栽培開始以来、ナチュラルなワインが造り続けられていたが、2000年代初頭にムーブメントとして再注目され、現在では、多種多様なスタイル、生産者が誕生している。

ナチュラルワインの世界的なリバイバルは、ワイン業界全体に大きな影響を与えた。オーストラリアも例外ではなく、従来型の生産者も農業や醸造方法を見直すきっかけになった。ナチュラルワインの反骨精神と創造性は、新たな世代のワイン愛好家を強く引きつけ、伝統に疑問を投げかける存在として注目を集めている。ペットナットやスキンコンタクトの白ワイン(オレンジワイン)をはじめ、ユニークなブレンドや土着品種が再評価されることで、冒険的で刺激的なスタイルが生まれ、消費者の味覚に新たなつながりをもたらした。

かつてオーストラリアワインに対して、「濃厚で重い」というイメージを抱いていた海外の人々も、ナチュラルワインによってそのイメージを刷新し、魅力を再発見している。

今回のセミナーでは、参加者はイザベル・レジュロンMWがセレクトした個性豊かな5種類のワインをテイスティング。現在のオーストラリアワインのクリエイティブな一面を体感した。

1)
ガンダガイ・ホワイト 2024
アリストテレス・ケ・アントゥラ
Gundagai White 2024
Aristotelis Ke Anthoula

ニューサウスウエールズ州産の美しいシュナン・ブラン。

わずかに揮発酸が感じられ、参加者の間で活発な議論がなされた。現代的なワイン造りではあまり見られない要素に戸惑う声もあったが、ワイン全体としてバランスが取れ、複雑性もあったため、「ナチュラルワインではこのような風味が現れることもあるが、それが支配的ではなく控えめであれば、むしろ奥行きと複雑さを与える要素になり得る」という好例となった。

2)
ホワイト 2023
ダスジュース
White 2023
Das Juice

南オーストラリア州アデレードヒルズ産の爽やかでアロマティックなソーヴィニヨン・ブラン&セミヨンのブレンド。

3)
セニエ ピノ・ノワール 2024
BK ワインズ
Saignée Pinot Noir 2024
BK Wines

南オーストラリア州アデレードヒルズ産の魅力的なピノ・ノワール。

4)
リップル 2023
ブラッシュ・ヒギンズ
Ripple 2023
Brash Higgins Wines Co.

南オーストラリア州マクラーレン・ヴェール産の楽しいネロ・ダヴォラ&カベルネ・ソーヴィニヨンのブレンド。

5)
ジェリーフィッシュ 2023
スモールフライ・ワインズ
Jellyfish 2023
Smallfry Wines

南オーストラリア州バロッサ・ヴァレーの1860年植樹の古樹から造られた美しいグルナッシュ。


多くの参加者が、「オーストラリアにおけるナチュラルワインの歴史がこんなにも古いものだとは知らなかった」との驚きの声を上げた。

オーストラリアの最大の魅力は、世界でも最古級の「古代の土壌」と「オールド・ヴァイン(古木)」の遺産で、これはほかの地域にはない、非常に貴重ですばらしい要素である。広大な国土と多様な地形、オーガニック栽培に適した気候、そして伝統に縛られずに挑戦を恐れない、エネルギッシュで柔軟な国民性も特筆すべき点だ。旧世界のような厳しい醸造規制が少ない分、自由度が高く、可能性に満ちたワイン産地といえる。

イザベル・レジュロンMWが注目する、魅力的な多様性あるオーストリアのテロワール、そしてブドウ品種は以下のとおり。

・アデレード・ヒルズの緑豊かな自然や、隣接するマクラーレン・ヴェイルの塩気を感じる海風
(ナチュラルワインのパイオニアたち、アントン・ファン・クロッパー、トム・シュブロック、ブレンダン・キース、ジェームズ・アースキンなどが拠点とするところ)。
・バロッサ・ヴァレーの古木のグルナッシュ、ムールヴェードル、シラーズ。
・エデン・ヴァレーやクレア・ヴァレーのリースリング。
・ニュー・サウス・ウェールズ州の古木のセミヨン。
・ビクトリア州沿岸部のピノ・ノワール。
・ビクトリア州内陸部ヒースコートのジェスパー・ヒルによる伝統的なビオディナミ・シラーズ。

イザベル・レジュロンMWは、挙げればきりがないと話す。

オーストラリアのナチュラル、低介入、オーガニック、ビオディナミの生産者たちは、エネルギッシュでイキイキとしたワインを造っている。早摘みやダイレクト・プレスによるスタイルが多く、軽やかでフレッシュ、酸味もしっかりあり、抽出も控えめ。非常に飲みやすく、食事との相性も抜群。これらの特徴は、とくに若い世代のワインファンを惹きつけてやまない。ナチュラルワインは新しいワイン文化の入口として、幅広い層に受け入れられている。

セミナー終了後は、テイスティングしたワイン生産者のほかのアイテムが並ぶ試飲会も開催され、実際に生産者とも交流できる機会も設けられた。参加者からは「まるで大阪・関西万博のオーストラリアパビリオン内に小さなRAW WINEが現れたようだ」と、大好評だった。

■オーストラリアパビリオン紹介
https://www.expoaustralia.gov.au/ja/australia-pavilion

Text : Etsuko Tsukamoto