
可能性の宝庫アルト・アディジェのワイン/後編
背後にドロミーティ山塊がそびえ立つ、自然豊かなアルト・アディジェ。この地で誕生する多彩な高品質ワインの魅力と可能性を探る。後編では、実際にアルト・アディジェワインを扱っている飲食店のペアリング例を紹介!
©Florian Andergassen
■レストラン1
三輪亭
現地人も唸る郷土料理と
地元ワインを嗜む
南チロル料理ひと筋のオーナーシェフ、三輪学。「アルト・アディジェの料理には、ほかの地域では見かけない香辛料が多く使われています。山岳地で保存性を高める必要があったなか、ハプスブルク家のお膝元で、多彩な香辛料が入手可能だった。こうした背景により、香辛料を多用する文化が残ったのではないかと思います」。
店で扱うワインは、大半がアルト・アディジェ産。「働いていた現地のリストランテのワインリストは9割が地元のワインでした。南チロルのワインは種類が豊富。独特の香りをもつ料理には、地元のワインを合わせるのがいい」。
三輪シェフのスペシャリテのひとつ、マレンデは、現地では山小屋で提供されている、生ハムやスペック、チーズの盛り合わせ。「これは、師弟コンビを堪能できるひと皿なんです。チーズは、アルト・アディジェの僕の師匠であるシェフが作ったもの。彼はチーズの熟成士でもあり、既存のチーズに地元のハーブなどさまざまなものを添加し昇華させている。生ハムやスペックは僕が現地のレシピをもとに研鑽を重ね、仕込んだものです」。
一見ワイルド、しかし口に運ぶと魅惑的な香りとともに広がる繊細な味わいには、スパイシーで香り高いアルト・アディジェワインしか思い浮かばない!
<ペアリング2種>

Pairing 1)
マレンデ
×
ゲヴュルツトラミネール 2022
ライムブルク・ワイナリー
Gewürztraminer 2022
Laimburg Winery

燻製したスペックやキャラウェイシード入りのサラミ、モスカート・ローザの搾りかすをつけ熟成させたシェーブルチーズ、スコッチウイスキー樽熟成の牛チーズなど、どれも香り豊か。アロマティックでスパイシーなゲヴュルツトラミネールとのバランスが絶妙だ!
Pairing 2)
ジビエのグーラッシュ
×
ラグライン・リゼルヴァ バルバゴル 2020
ライムブルク・ワイナリー
Lagrein Riserva Barbagol 2020
Laimburg Winery

硬い肉を赤ワインやパプリカで煮込んだグーラッシュは、南チロルの定番料理。香辛料のエキゾチックな香りが、食欲を刺激する。野生味ある猪肉のしっとり濃厚なうま味には、スパイシーでほどよいワイルドさと熟成感あるリゼルヴァタイプのラグラインを。

三輪 学/Manabu Miwa
オーナーシェフ。大学在学中より飲食業に携わる。卒業後、国内およびアルト・アディジェのリストランテで修業。南チロルの郷土料理に魅せられ、2007年オープン。
「三輪亭」
住所:東京都世田谷区豪徳寺1-13-15 ツノダ第1ビル1階
TEL:03-3428-0522
https://www.miwatei.com
■レストラン2
麻布台 粋 稲葉
ピノ・ビアンコと和食
圧巻のペアリング
旬の食材にこだわる割烹料理を、カジュアルにアラカルトで注文できる日本料理店の「粋稲葉」。幅広く世界各地のワインを扱うなか、アルト・アディジェからは、ピノ・ビアンコをセレクトしている。
「日本料理は酸味、うま味、苦みなど、すでにひと皿の中で五味のバランスがとれていることが多い。こうした完成形の料理に寄り添いつつ、食材自体の強いうま味にも負けないパワフルさも兼ね備えたワインを探していたとき、アルト・アディジェがよいと思ったんです」と、マネージャーでソムリエの藤崎亮太。強い日照と寒暖差が激しい気候のアルト・アディジェでは、酸やミネラル感とともに果実味も豊富なワインが生まれる。
「アルト・アディジェのピノ・ビアンコは、鋭利な酸とミネラルに対してのボリューミーな果実味が秀逸。明確に品種個性を表現しています」。
ペアリングでは1杯のワインを複数の皿に合わせることが多いそう。同じワインで、異なるベクトルのペアリングを堪能できるのも楽しい。
「日本料理の味わいは、食材の質の強さが際立つ。だからワインも芯をしっかり携えていることが重要です。ペアリングする場合、料理に寄り添って支えながら、ワインとしての存在感や産地のテロワールも伝わるような品質の高さが欲しい。そんなとき、アルト・アディジェのワインが威力を発揮するんです」。
<ペアリング2種>

Pairing 1)
炙り伊佐木のポン酢ジュレ
焼きトマトを添えて
×
ピノ・ビアンコ “ヴォルベルグ” リゼルヴァ 2020
テルラーノ
Pinot Bianco “Volberg” Riserva 2020
Terlano

香ばしい香りをまとったイサキのお造りに、ポン酢ジュレとフルーツトマトで酸味、うま味を付加。選果したブドウを大樽発酵したワインは凝縮果実味、酸、鉱物感がレイヤーとなり、奥行き深い。均整が取れた料理とワインを合わせると、お互いを引き立て合う。
Pairing 2)
若鮎のフライ
和風柑橘タルタル
×
ピノ・ビアンコ “ヴォルベルグ” リゼルヴァ 2020
テルラーノ
Pinot Bianco “Volberg” Riserva 2020
Terlano

アユのサクサクとした食感やほろ苦みと、ワインのもつ鉱物感やフワッとした抜け感のよさとのバランスが絶妙! タルタルソースとワインの果実味も無理なく馴染む。油が多い料理に対し、酸味やミネラル豊富なワインで中和するという、フレンチ的なペアリング技法。

藤崎 亮太/Ryota Fujisaki(写真左)
福田 敦/Atsushi Fukuda(同右)
マネージャーの藤崎亮太と、料理長の福田敦。2024年12月オープン。ソムリエでもある藤崎は、ホテル、ワインバー、ステーキハウスなど、多彩な業態での経験豊富。

「麻布台 粋 稲葉」
住所:東京都港区麻布台1-3-1 麻布台ヒルズ タワープラザ3F
TEL:03-6277-8707
https://www.ginza-inaba.tokyo/azabudai/
■レストラン3
French & Wine ビストロアジル
料理とのバランス抜群な
冷涼産地のワイン
「店のコンセプトは、シェフとソムリエが迎えるワイン空間。料理長も僕も料理人でありながらソムリエ資格保持者なので、食とワインが自然に結びついてくるんです」と、マネージャーの小松高士。アルト・アディジェのワインはグリューナ・ヴェルトリーナーと、スキアーヴァを扱う。
「スキアーヴァは使い勝手が抜群にいい。ビストロの前菜にはパテ・ド・カンパーニュなど肉料理が多く、白ワインを合わせることに違和感がありました。そこで惹かれた赤ワインが、ロゼとは違う力強さもありつつ軽やかなタッチのスキアーヴァ。シャルキュトリーをはじめメインディッシュまで、幅広く使えます」。
爽快な酸味とほろ苦さが特徴的なイサルコ渓谷のグリューナ・ヴェルトリーナーの白ワインは、苦みのある野菜との相性が抜群だ。「料理に合うワインをお客様に提案する際、産地の話などすると、興味をもってくださり、オーダーいただけることも多いです」。
北部に位置するイサルコ渓谷は、高標高な冷涼産地だ。この地ならではの繊細さも、料理とのバランスを図るうえで好都合だそう。「ワインのアルコール度数、酸味、雰囲気などは、当店の料理の味付けにとても合っているんです」。
現地で肩肘張らずにおいしい料理と地場ワインを堪能しているかのような、心地よさあふれる自然体のペアリングだ。
<ペアリング2種>

Pairing 1)
サーモンと
初夏野菜のマリネ
×
グリューナー・フェルトリナー 2023
カンティーナ・ヴァッレ・イサルコ
Grüner Veltliner 2023
Cantina Valle Isarco

40℃で低温調理したサーモンは、厚切りでとろりとなめらか。ワインの柔和なテクスチャーとの親和性があり、サーモンの脂をワインの酸や鉱物感が中和。アスパラやスナップエンドウ、ケッパーとオリーブ多めのタプナードのうま味をワインが引き出してくれる。
Pairing 2)
牛ハラミのステーキフリット・
エシャロットバターソース
×
スキアーヴァ 2023
カンティーナ・ヴァッレ・イサルコ
Schiava 2023
Cantina Valle Isarco

ニンニクとタイムで香り付けしたエシャロットバターソースをかけた、牛ハラミのステーキ。脂の少ない赤身肉ゆえ、噛んでいるうちに湧き出すうま味と、スパイシーながらピュアなスキアーヴァの赤ワインが好相性。スキアーヴァは、まさに食とともにあるワインだ!

近藤 健/Takeshi Kondo(写真左)
小松 高士/Takashi Komatsu(同中)
田中 義明/Yoshiaki Tanaka(同右)
店長の近藤健、マネージャーの小松高士、料理長の田中義明。全員がワインに精通しサービスもこなすハイブリットな料理人。扱うワインは全世界の産地から厳選。

「French & Wine ビストロアジル」
住所:東京都港区赤坂3-10-4 赤坂月世界ビル2F
TEL:03-3505-2399
https://smile-c.co.jp/bistro-agile/
Photo : Yosuke Owashi(三輪亭), Yusuke Onuma(麻布台 粋 稲葉、French & Wine ビストロアジル)
Text : Etsuko Tsukamoto

![[ワイナート]The Magazine for Wine Lovers](https://winart.jp/winart_kanri/file/img/common/img_header_winart.png)























