
大阪・関西万博 オーストラリアパビリオンにて開催!第2回セミナー「マイ・オーストラリアワイン・リスト」、第3回セミナー「オーストラリアのサスティナビリティを味わう」
オーストラリア大使館商務部は、大阪・関西万博の期間中、4回にわたりワインセミナーを開催する。6月に行なわれた第2回セミナーは、ザ・サウザンド京都シェフソムリエの岩田渉と、同ホテルソムリエの沖中亮真が登壇。同日開催の第3回セミナーでは、引き続き岩田が講師を務めた。終了後両名に、オーストラリアワインならではの魅力や近年のサステイナビリティ事情をうかがった。
■第2回セミナー「マイ・オーストラリアワイン・リスト」
岩田渉と沖中亮真がともに講師を務めた第2回セミナーのテーマは「マイ・オーストラリアワイン・リスト」。

「お越しいただいた参加者の皆様は、ワインに精通された方、またはワインを愛される方々ばかりです。そこで、日々の現場に立つソムリエとしての視点を生かし、より踏み込んだ内容を重視した構成にしました。実際に現地を訪れたからこそお伝えできるエピソードや、現地の最新情報も盛り込みながら、参加者の皆様に新たな発見と楽しみをお届けできるよう努めました」と、沖中。

ザ・サウザンド京都ではオーストラリアワインもサービスしているが、実際に飲んでみて、そのイメージとのギャップに驚くお客様が多いそう。
「オーストラリアワインと聞くと『パワフルなシラーズ』というイメージをまだお持ちの方が多い印象です。現在、オーストラリアのワイン産地は60を超え、各産地ではテロワールや生産者のフィロソフィーが色濃く反映されたワインが数多く造られています。お客様にそうしたワインを味わっていただくと、驚きのフィードバックをいただくことがよくあります」と、岩田。
世界各地のファインワインを扱うホテルにおいて、オーストラリアワインをセレクトする際に重要視するポイントは「品質の高さと個性」だという。

岩田は、「国際品種のワインを選ぶ場合には、基本的に品質の高さを意識し、そこにテロワールの個性などが調和するようなワインを選びます。一方で、ハンズオフやナチュラルといった個性的なアプローチで造られるワインに関しては、ラベルも含め、ワインのスタイルがユニークであることも意識しています」と、そのこだわりを説明する。

一方、沖中は、「店舗のコンセプトや、料理との調和が何より大切です。オーストラリアワインはその背景にあるストーリーもさることながら、近代的でモダンなアプローチを採用しているワイナリーも多い。各ワイナリーの取り組みなどもお客様にしっかりお伝えしながら、料理との最適なマリアージュを提案することが必須だと考えています」と、ソムリエとしての役割を強調する。
セミナーでは、トップソムリエのふたりが厳選した6種類のワインを、参加者たちとともにテイスティングした。

1)
<西オーストラリア州 / フランクランド・リヴァー>
アイソレーション・リッジ・ヴィンヤード・リースリング 2022
フランクランド・エステート
Isolation Ridge Vineyard Riesling 2022
Frankland Estate
2)
<南オーストラリア州 / バロッサ・ヴァレー >
マスターズ マーガレット セミヨン 2016
ピーター・レーマン・ワインズ
Masters Margaret Semillon 2016
Peter Lehmann Wines
3)
<西オーストラリア州 / マーガレット・リヴァー>
シャルドネ 2022
ヴァス・フェリックス
Chardonnay 2022
Vasse Felix
4)
<ビクトリア州 / ヤラ・ヴァレー>
ピノ・ノワール 2023
エアリー・バンク
Pinot Noir 2023
Airlie Bank
5)
<ニューサウスウェールズ州 / ハンターバレー>
ガメイ ブレンド 2024
ヴィンデン・ワインズ
Gamay Blend 2024
Vinden Wines
6.
<南オーストラリア州 / クレア・ヴァレー>
アフタヌーン・ロール・グルナッシュ 2023
トペ・ワインズ
Afternoon Roll Grenache 2023
Topé Wines
供されたワインの中でも、1は近年の冷涼産地(クールクライメント)への注目を背景に、世界的に躍進を遂げたワイン。2や3は、伝統的なワイナリーでありながら、かつてのような力強いスタイルではなく、非常に洗練され、新世界らしい革新性とエレガンスを共存した味わいに進化している。

「過去に飲んだことがあるからと、現在のスタイルを試さないのは本当にもったいない。オーストラリアワインの魅力は、伝統を大切にしながらも、一貫性に縛られない柔軟さと進化のスピード。トレンドが目まぐるしく変わり続けることは、むしろオーストラリアワインの可能性と挑戦の証であり、すばらしいことだと思う」と、沖中。
5は今回供出した6アイテムの中で、沖中がとくに印象に残ったワインだったそう。「岩田ソムリエがセレクトしたこのワインは、ラベルデザイン、ブドウのブレンド比率、スタイルなど、普段の私自身の好みとは少し異なるものでした。しかし、複雑でアロマティックな香りと味わいのバランスの妙に心を打たれ、衝撃を受けました。何事も先入観で判断してはいけないなと、改めて思いました」。

近年のオーストラリアワインは、他産地には見られないような自由なアプローチとフィロソフィーで造られるワインが非常に増えている。クラシックなシラーズや、ここ数年人気のあるクールクライメイトのピノ・ノワールやシャルドネだけでなく、若い生産者たちが手がける多種多様なワインが現在のオーストラリアのトレンドを牽引している。
岩田は、「とくに注目しているのは、オルタナティブ・バラエティ。イタリア系移民の方々も多いことから、オーストラリアのアイデンティティにも自然に寄り添うと同時に、地中海性気候の暖かく乾燥した地域にとても相性のよい品種だと思う。今後ますます取り扱いを増やして、消費者にその魅力を伝えたいです」と、今後の展望を述べた。
沖中が注目しているのは、タスマニア州のピノ・ノワール。「世界が注目しているのは明白だが、日本国内ではまだその魅力が充分に伝わっていないように感じている。『ブルゴーニュにもっとも近い新世界のピノ』とも称されるタスマニアのピノ・ノワールが、もっと注目されるべきだと強く思っています」。
■第3回セミナー「オーストラリアのサステイナビリティを味わう」
第2回セミナーに続き、岩田が講師を務めた第3回目セミナーのテーマは、「オーストラリアのサステイナビリティを味わう」。

世界各地でサステイナビリティへの意識が高まる中、オーストラリアのワイン産業もその動きを牽引している。さまざまな取り組みの基準となっているのは、 ESG(E:環境、S:社会、G:ガバナンス)。市場推進要因を考慮した場合、E=地球の自然資源を生かす暮らし、S=人々およびコミュニティの長期的な福利維持、G=企業の経営及び収益方法の検討、これらが意思決定において重視されている。
現在、サステイナブル・ワイングローイング・オーストラリアに認証されているワイナリーは1480以上。オーストラリアでは、ワイン産業全体でサステイナビリティにコミットする姿勢が非常に強く感じられる。また、オーストラリアやニュージーランドはもともと自然環境を保護する意識が強く、昔から当たり前のようにさまざまな取り組みを行なっている印象もある。
セミナーでは、実際にサステイナブルな農法を実践している6ワイナリーの紹介とともに、各ワイナリーのワインがテイスティングされた。

1)
<南オーストラリア州 / アデレードヒルズ>
“シーオーク ラベル”” ペティアン・ナチュレル 2021
ネリンガ
Sheoak Label” Petillant Naturel 2021
Ngeringa
1990年代初頭にバイオダイナミック認証を所得した畑のブドウから、35年にわたり上質なワインを生産している。オーストラリア最初のエコ・ヴィンヤードのひとつでもあり、畝間には在来種の下草を育む。敷地の20%以上を在来種で再植林することで生物多様性を高め、化学合成物質の使用を排除した。
これらのアプローチは2024年の「ヴィンヤード・オブ・ザ・イヤー」受賞をはじめ、国内で高い評価を得ている。
2)
<西オーストラリア州 / マーガレット・リヴァー>
アートシリーズ・リースリング 2024
ルーウィン・エステート
Art Series Riesling 2024
Leeuwin Estate
生物多様性の回復と、動物生息地の保護に重点をおいた持続可能性への取り組みを進めるワイナリー。
大規模な環境プログラムの一環として、2万5000本以上の在来樹木、低木、スゲ類を敷地内全体に植え、暴風垣や防風林、生物系の回廊として活用している。水辺にも在来植物を植えることで川の流れを穏やかにし、水を浄化。虫や昆虫、有袋類動物の生育域を確保した。炭素の回収、蓄積、土壌の安定化も実現している。
また、絶滅危惧種のクロオウムのための巣箱を設置。益虫用の植栽を維持して有益な昆虫を育むことで、化学薬品の使用を削減している。
3)
<ニューサウスウェールズ州 / ハンター・ヴァレー>
ヴァット 1 ハンター セミヨン 2018
ティレルズ
Vat 1 Hunter Semillon 2018
Tyrrell’s
5世代続く家族経営のワイン企業として、長年にわたり環境責任を重視している。
2009年に導入した環境管理システムにより、23年までに燃料および電力由来の温室効果ガス総排出量を62%削減。15年にはソーラーパネルシステムを導入し、年間390トンの排出量の削減に成功した。
ワイナリーの屋根に熱反射塗料を噴霧被覆することで建物の内部温度を下げ、冷蔵設備への負担を軽減する工夫も凝らしている。
4)
<ビクトリア州 / ヤラ・ヴァレー>
トゥルー・カラーズ・ピノ・ノワール 2023
ロブ・ドーラン・ワインズ
True Colours Pinot Noir 2023
Rob Dolan Wines
契約栽培者と連携し、持続可能な栽培を実現するとともに、自社ワイナリーのサステイナビリティの強化にも注力している。
畝間にイネ科の植物やクローバーを植え、雑草抑制、水分保持、土壌改良を実施。ワイン造りに使用する水は100%自給を実現し、畑にはダムの水、ワイナリー内では雨水を利用している。醸造時に出るブドウの果皮、種、梗は家畜の飼料や堆肥として再利用、または有機肥料化。
パッケージ面では、軽量ボトルへの切り替えを実施中。2028年までにパッケージ全体をリサイクル可能素材、もしくは土に還る素材に切り替える予定だ。
5)
<南オーストラリア州 / クレア・ヴァレー、マクラーレン・ヴェール>
ジャラマン シラーズ 2022
ウェイクフィールド
Jaraman Shiraz 2022
Wakefield
1950年代後半に設立された家族経営のワイナリーで、オーストラリアの独立系ワイナリーとして初めて科学的根拠に基づく目標(Science Based Targets)に取り組み、2030年までに排出量50%削減を目指している。
多くの取り組みのひとつとして、ほぼすべての製造投入資材と包装資材を100%リサイクル可能にした。唯一リサイクル不可能なプラスチック製パレットラップについても、180日で分解される世界初の代替品を開発中のオーストラリア企業との提携を検討中だ。
6)
<南オーストラリア州 / マクラーレン・ヴェール>
オールド・ヴァイン・グルナッシュ 2021
ヤンガラ・エステート・ヴィンヤード
Old Vine Grenache 2021
Yangarra Estate Vineyard
風光明媚なブルーイット・スプリングスに位置し、有機およびバイオダイナミックの認証を受けた単一畑を所有するワイナリー。
バイオダイナミック農法により土壌の健全性を高め、小川沿いの在来植物が生物多様性を促進。殺虫剤を使わないことで、有益な昆虫や動物が自然なバランスで生育する環境を提供している。ミツバチの巣箱を設置し、在来植物の受粉を促進。冬には羊が草を食べ下草をコントロール。自然な肥料を与えてくれるとともに、トラクターによる土の圧縮を軽減している。
さまざまなシーンで気候変動の影響が垣間見られる昨今、オーストラリアの生産者たちも現状を非常に厳しく捉えている。こうした状況下において、畑でのアプローチとしてカバークロップや環境再生型農業の導入などによる畑の改善を進めるとともに、代替品種の積極的な採用などで、気候変動とうまく共存している様子がうかがえる。
また、気候変動をきっかけに、2030年までに42%の温室効果ガス削減など現実的な目標を掲げ、いままで以上にサステイナブルを意識した取り組みが着実に進んでいる印象だ。

第2回、第3回の両セミナーとも、参加者たちはオーストラリアワインの現状を熟知するトップソムリエの話に熱心に耳を傾けながら、多彩なオーストラリアワインのテイスティングを満喫したようだ。
■オーストラリアパビリオン紹介
https://www.expoaustralia.gov.au/ja/australia-pavilion


Text : Etsuko Tsukamoto

![[ワイナート]The Magazine for Wine Lovers](https://winart.jp/winart_kanri/file/img/common/img_header_winart.png)























