
モワルーの名手が造る、セックが示す真価
南仏ピレネー山脈の麓、アトランティックの南風が吹き抜けるジュランソン。甘口白ワインの産地として名高いこの地で、辛口においても卓越した個性をもたらす生産者、ドメーヌ・コアぺの真価を知ろう。
フランス南西地方において、極甘口ワインの名手として知られるドメーヌ・コアぺ。独学で栽培と醸造を学んだアンリ・ラモントゥが一代で築き上げたジュランソンの名門だ。
甘口用のブドウは年をまたぐこともあるほどの遅摘み、さらに房の上の茎に傷を付けて実に水分を与えず凝縮度を高めるという独自の手法を考案。格段に糖度が増したプティ・マンサンから生まれる「カンテサンス」は重層的な香りと甘美な味わいに満ち、世界のトップ100ワインにも名を連ねた銘酒だ。
だがコアぺが優れているのはこのモワルーだけではない。南西地方の気候と土壌に根ざした地場品種の特性を生かし、甘口の技巧と哲学を転化して、個性あふれるジュランソン・セックを追求しているのだ。
緻密なペアリングで定評のあるソムリエの藤森達也が、フラッグシップのモワルーとともにふたつのジュランソン・セックを試飲した。いずれも香りの奥行きが印象的で、骨格を支える美しい酸と豊かな果実味を湛える。さらに熟成のポテンシャルも感じさせる完成度だ。シンプルでフラットな白ワインとは一線を画す逸品であると太鼓判を押した。
フランスのワイン産地において、南西地方はメジャーな生産地とは言い難いが、「知る人ぞ知るユニークな産地。こだわりをもつワイン愛好家には必ず刺さる」と言い切る。
ジュランソンで主軸となるプティ・マンサンは果皮が厚く耐病性も高いことから日本でも注目の品種。北から南まで各地で植えられており、日本ワインファンの間では知名度もあるので、その原産地としても注目されるだろう。
甘口ワインで名を馳せる造り手が、辛口でもその革新性を示す。ドメーヌ・コアぺのワインは、ペアリングの域を超えた傑作と呼べる。

Domaine Cauhapé
ドメーヌ・コアペ
Chant des Vignes Jurançon Sec 2021
シャン・デ・ヴィーニュ ジュランソン・セック 2021(左)
グロ・マンサンにカマラレをブレンドし、ステンレスタンクで醸造。柑橘に木なり果実、ハーブに白い花が織りなす香り。厚みのあるアタック、中盤から伸びる果実感、キレイな酸。スターターよりも2、3皿目の前菜に。ジュランソンの辛口白の可能性を示す。(2,860円)
《Fujimori’s comments》
スッキリ系かと思いきや、厚みも感じさせる白。魚介なら厚めにカットしたホタテ貝やイカなど噛みごたえのある素材で、レアもいいが軽く火入れしても。蒸し鶏にアサツキやシブレットなど香草を使ったグリーン系ソース、小籠包など出汁やスープで食べる料理も◎。
La Canopée Jurançon Sec 2021
ラ・カノペ ジュランソン・セック 2021(中)
オーク樽熟成のプティ・マンサン100%。熟したアンズやモモのコンポート、ウッド系スパイスの甘美な香り、あとを引くまろやかさ。厚みがありながらも重心の低い酸味、味わいを引き締めるビターなフィニッシュ。複雑味も充分、熟成にも耐えうる。(6,435円)
《Fujimori’s comments》
香りは甘く飲むと辛口、リッチな果実感とスパイシーさが均衡。醤油にみりん、砂糖を使う和食、柑橘の要素を加えて軽めに仕上げるクリームソースや衣で香ばしさを出す魚介のフライ、グリルしたポークにオレンジやマーマレードなどの甘酸っぱいソースを添えて。
Quintessence du Petit Manseng Moelleux half 2017
カンテサンス・デュ・プティ・マンサン モワルー ハーフ 2017(右)
遅摘みのプティ・マンサンを24カ月樽熟成。凝縮した果実と多彩な花のミツのニュアンスにオリエンタルスパイスが絡み合い、熟成感とフレッシュさが同居。香りを裏切らない贅沢かつ上品な甘みを、酸味が追いかける。(12,760円)※写真はフルボトル。
《Fujimori’s comments》
産地に倣うならフォアグラの冷製や生牡蠣などが鉄板の組み合わせ。だがソーテルヌに引けをとらない上品で完成された極甘口は、料理とペアリングするよりもハードタイプのチーズや生ハムなど塩味のあるものをつまみながら、食後の優雅な一杯として楽しみたい。

藤森達也
Tatsuya Fujimori
都内フレンチやホテル、仏リヨンのレストランなどを経て、東京・麻布台ヒルズ「ジャヌ東京」シェフソムリエに就任。ホテル内のレストラン&バーを統括。
[お問い合わせ先]
株式会社モトックス
TEL:0120-344101
https://www.mottox.co.jp
Photo : Haruki Kodama
Text : Hiromi Tani

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