
大阪・関西万博 オーストラリアパビリオンにて開催! 第4回セミナー「オーストラリアの女性ワインメーカー」
オーストラリア大使館商務部では、大阪・関西万博の期間中、4回にわたりワインセミナーを開催した。10月に行なわれた第4回セミナーでは、コンラッド東京 エグゼクティブ・ソムリエの森本美雪と、ワインライター/ワイン講師の小原陽子が登壇。終了後、両名に、オーストラリアワイン業界における女性の活躍ぶりや、セミナーで供出したワインなどについてうかがった。
オーストラリアのワイン業界では、かなり早い時期から女性の進出が活発だった。近年はさらにその勢いに拍車がかかっている。2024年に発表された報告書によると、ワイン業界の主要な役職における女性比率および10年前との比較データは以下のとおり。
・CEO:33.7%(10年前は12.7%)
・ワインメーカー:16.7%(同8.8%)
・ブドウ栽培者:21.5% (同10%)
・マーケティング:58.4%(同53.5%)
「オーストラリアでは、栽培や醸造だけでなく、ナーサリーやブドウ栽培コンサルタントなど、ワイン業界の多様な分野で女性が活躍しています。世界全体では、ワイン業界は依然として男性優位の側面が根強く残る中、オーストラリアでは他国に比べて、性別に関わらず実力ある人が力を発揮し活躍できる環境が確立していると思います」と小原陽子。
「オーストラリアでは、ホスピタリティ業に携わる人々への社会的リスペクトが非常に高く、その中で早い段階から女性もマネージャーやヘッドソムリエといったリーダー職に就いてきました。これは、業界全体が多様性を受け入れ、専門職としての誇りを支えていることの明確な表れだと感じています」と、森本美雪。

セミナー参加者たちとともにテイスティングしたワインは、女性ワインメーカーが手がけた8アイテム。
「シラーズ大国としての印象が強いオーストラリアですが、今回はあえてシラーズを外し、オーストラリアらしいオルタナティブ品種と国際品種のコンビネーションを中心にセレクトしました」と森本。スタイルの多様性や表現の幅広さが伝わるラインナップだ。

1)
<南オーストラリア州 / アデレード・ヒルズ>
アルティア ブリュット・ロゼ MV
ディヴィエーション・ロード
Altair Brut Rosé MV
Deviation Road
品種:ピノ・ノワール60%、シャルドネ30%、ムニエ10%
ワインメーカー:ケイト・ローリー
19歳でシャンパーニュに渡り、ワイン醸造学と栽培学を学ぶ。夫とともにワイナリーを設立。現在、同ワイナリーはオーストラリアを代表するスパークリングワインの生産者のひとつとして高く評価されている。

2)
<ヴィクトリア州 / ヤラ・ヴァレー>
クレシー・シャルドネ 2022
ヤラ・イエリング
Crécy Chardonnay 2022
Yarra Yering
ワインメーカー:サラ・クロウ
2001年、ハンター・ヴァレーのワイナリーに入社し、キャリアをスタート。その後、アメリカのオレゴン州、フランスのローヌ地方ではワインメイキングを学び、13年、ヤラ・イエリングにワインメーカーとして入社。17年、女性で初めてジェームス・ハリデーの「ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」に選出。

3)
<ヴィクトリア州 / ヤラ・ヴァレー>
マルサンヌ・ルーサンヌ 2021
イエリングバーグ
Marsanne Roussanne 2021
Yeringberg
ワインメーカー:サンドラ・ド・ピューリー
家族経営のワイナリーで、4代目のデヴィッドが栽培責任者として参画後、2000年に姉のサンドラがワインメーカーとして加わる。サンドラはワイナリーに加入する前に、ワイン科学の学位、MBA、ホテル・マネジメントのディプロマを取得。シェフの資格ももつ。

4)
<南オーストラリア州 / アデレード・ヒルズ>
ホワイト・ラベル ピノ・グリ 2024
ヴィンテロパー
White Label Pinot Gris 2024
Vinteloper
ワインメーカー:サラ・マロッコ
冷涼産地のシャルドネとピノ・ノワールに情熱を傾け、醸造学のディプロマを取得後、南オーストラリア州、ヴィクトリア州、カリフォルニア州(アメリカ)、ブリテッシュ・コロンビア州(カナダ)で経験を積む。2023年より、ヴィンテロパーですべての生産工程を監督。アデレード・ヒルズの地域のサブ・コミッティにも積極的に参加。

5)
<ヴィクトリア州 / ヤラ・ヴァレー>
ヤラ・ヴァレー・ピノ・ノワール 2023
ジャイアント・ステップス
Yarra Valley Pinot Noir 2023
Giant Steps
ワインメーカー:メラニー・チェスター
アデレード大学でブドウ栽培学と醸造学を修了。ワイン業界への多大な貢献が評価され、数々の賞を受賞。ワイン審査員としての評価も高く、「メルボルン・ロイヤル・ワイン・アワード」の審査員長を務める。2021年、醸造およびブドウ栽培の責任者としてジャイアント・ステップスに入社。

6)
<南オーストラリア州 / マクラーレン・ヴェール>
アルカラ マクラーレン・ヴェール グルナッシュ 2024
ヘアールーム・ヴィンヤーズ
Alcala McLaren Vale Grenache 2024
Heirloom Vineyards
ワインメーカー:アレクサンドラ・ハセリッチ
カナダ出身。豊富な国際経験を生かし、ヘアルーム・ヴィンヤーズではワインメーカーとして貢献。伝統的なワイン醸造を守りつつ、南オーストラリア州各地で有機栽培の推進に力を注ぐ。

7)
<南オーストラリア州 / マクラーレン・ヴェール>
サンジョヴェーゼ 2022
ザ・ヘドニスト
Sangiovese 2022
The Hedonist
ワインメーカー:キンバリー・クーター
大学で建築デザインを学びながら、ワインショップでアルバイト。その後、マクラーレン・ヴェール郊外にある父のブティックワイナリー、ザ・ヘドニストでキャリアをスタート。2005年、カリフォルニアに渡り、1年間研鑽を積む。帰国後、大学でワイン科学を学ぶと同時に、ザ・ヘドニストでも働く。

8)
<西オーストラリア州 / マーガレット・リヴァー>
ダイアナ・マデリン 2021
カレン
Diana Madeline 2021
Cullen
ブドウ品種:カベルネ・ソーヴィニヨン91%、メルロ4%、カベルネ・フラン3%、マルベック2%
ワインメーカー:ヴァーニャ・カレン
母で先代のダイアナより継承し、1981年からチーフワインメーカーを務める。大学でワイン醸造を学び、世界的ワインコンクールの審査員を務めるなど、ワイン業界に多大に貢献。自社畑ではバイオダイナミックによるブドウ栽培を行ない、世界的に高い評価を博する。

小原がとくに印象深かったワインは、1、2、8。「1のデヴィエーション・ロードは、以前からその品質の高さと複雑さに注目していたワイン。新世界の伝統製法にありがちなフルーティさが前面に出るカジュアルなスタイルではなく、セイバリーさにみちた本格派のスパークリングである点を紹介できたと思います」。
8については、「“オーストラリアのカベルネ”ではなく、“世界のトップクラスのカベルネ”というにふさわしい品格と厳格さを兼ね備え、圧倒的な品質の高さを感じさせるものでした。熟成のポテンシャルが高く、それでいて、いますでにタンニンと酸が充分にまとまっていて、まさに秀逸という言葉がぴったり」と、コメント。

一方、森本は3を推す。「ローヌ系品種というと、一般的には白ワイン、赤ワインともにセイボリーな味わいで、フルボディをイメージする方が多いと思いますが、このワインはその固定観念を覆してくれます。ヤラ・ヴァレーの冷涼な気候を想起させる、伸びやかな酸がイキイキと感じられ、ふくよかな果実味とバランスが取れている。オーストラリアのローヌ系白ワインはこんなにも洗練された味わいなのか、と感じていただける、印象深いワインだと思います」。

テイスティングに供された8種類のワインを手がけたワインメーカーは、業界を切り拓いてきたレジェンド的な女性醸造家から、いままさに新しい潮流を生み出している若手生産者まで多彩。「単に“女性が造るワイン”という粋に留まらず、オーストラリアワインがもつ懐の深さ、そしてその進化のダイナミズムを感じていただける構成にしたいと考え、このラインナップにしました」と、森本は話す。
今回のセミナーを通して改めて感じることができたオーストラリアワインの魅力は、多様性と寛容性だ。

「オーストラリアに滞在していた際、まだチーフ・ワインメーカーのポジションではないけれど、ナンバー2として重要な役割を担っている女性が多いことに驚きました。彼女たちがチーフとしてワイナリーを牽引していく日もそう遠くはないと思います。また当時、女性のソムリエ仲間の多くが妊娠・出産を経ても柔軟にキャリアを継続していて、その点も印象的でした。オーストラリアでは、復職後の働き方を自ら選択できる環境が整っており、子育てと仕事の両立を自然に実現できる仕組みができている。こうした制度面、文化面での成熟は、日本のホスピタリティ業界にとっても学ぶべき点が多いのではないでしょうか」と森本。
「自由闊達な空気のもと、性別を問わずに、さらには世代も超えて才能をいかんなく発揮できる環境が非常によく整っているのがオーストラリアのワイン業界であり、それは世界的にみても最先端といって過言ではないでしょう」と小原。
参加者たちは、エデュケーターとソムリエという、ワイン業界の異なる立場で活躍する女性講師ふたりの見解を興味深く聞き入りながら、多彩なオーストラリアワインのテイスティングを満喫していたようだ。


Text : Etsuko Tsukamoto

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